不貞行為について

 

不貞行為について

 

1.不貞行為とは何か

(1)不貞行為とは、夫婦の一方が他の異性と性的関係を持つことです。

この他にも、夫婦関係を破綻に至らせる可能性のある異性との交流・接触も不貞行為に該当する場合があります。つまり、不貞とは簡単に説明すると不倫のことをいうことになります。

 

(2)不貞行為となるのはどういうものがあるか

不貞行為には、異性との性的行為が含まれます。
性的行為が行われていない場合であっても、異性とラブホテル等を継続的に利用し一緒に過ごすこと自体が、婚姻の継続を著しく困難にするため、不貞行為に含まれると判断した裁判例もあります(東京地方裁判所平成25年3月25日)


「逢いたい」「大好き」といった愛情表現を含むメールは、不貞行為に当たると判断した裁判例(東京地方裁判所平成24年11月28日)や否定した裁判例(東京地方裁判所平成25年3月15日)があります。また、手をつないで歩いていたことが不貞行為にあたると判断した裁判例(東京地方裁判所平成17年11月15日)や否定した裁判例(東京地方裁判所平成20年10月2日)もあります。


これらのように、具体的な事情によって不貞行為に当たるか否かが異なります。その差は性的行為があったと推認できるか否かにあるといえます。もっとも、その判断は難しいので、一度弁護士にご相談されることをお勧めします。

 

2.慰謝料を求める方法

(1)任意の交渉を求める方法

① 電話での交渉

電話で交渉できる場合、話がスムーズに進めることができる点がメリットになります。しかし、そもそも、知らない電話番号は着信があっても出ないという方も多いと思います。また、慰謝料請求をしてくる人の電話番号であることが分かれば、着信拒否や無視したいと考える人も多いと思います。


会話ができたとしても録音機能がない場合、どんな話をしたか後々問題になっても対応できない点もデメリットといえるので、効果的な方法とはいえません。

② 普通郵便による交渉

文書であれば残るので電話よりは証拠となる点で有効な方法であるといえます。

③ メールによる交渉

普通郵便ではなく、メールで交渉するという方法もあります。
メールは、不貞相手など相手の住所がわからなくても送ることが出来ます。


ただし、郵便による方法と比べて「重みがない」という問題がありますので、通常は郵便による方法の方が心理的にプレッシャーを与えることが出来ます。

④ 内容証明郵便による交渉

内容証明郵便は、いつ、どんな内容が誰から誰に郵送されたかを5年間郵便局が証明してくれます。これは、内容証明郵便を取り扱っている郵便局に2通同じ文書を持っていき、1通を相手方に送り、もう1通を5年間郵便局が保管するという方法がとられます。


内容証明郵便であれば、相手方が文書を捨てても請求したことを証明できますし、5年も郵便局で保管されると思えば文書の内容も過激なものになりにくいと思います。とはいえ、内容証明郵便なんて送ったことがない人の方が多いと思います。弁護士に依頼することで文面に悩まずに済みますし、依頼するのも1つの方法だと思います。

⑤ 以上のとおり、任意の交渉を求める場合も、様々な方法があります。

それぞれの長所短所がありますので、具体的な状況に応じて選択していくことになります。

 

(2)調停による方法

夫婦の一方に対して、離婚調停に伴って慰謝料を請求することができます。離婚調停の申立書という書類の中に慰謝料を請求する旨書き、裁判所に提出します。相手方は、答弁書という書類で反論をしてきます。


その後、調停期日の中で、調停委員が双方の主張を交互に聞いていき、そもそも慰謝料を支払うのか、支払う場合いくら支払うのかを話し合いの中で決めていきます。決めた内容は、調書という書類に記載され、これに違反した場合は、強制執行の手続をする効力が認められます。

 

(3)裁判による方法

請求金額を記載した請求の趣旨や、慰謝料を請求することになった原因等の主張を書いた請求原因を記載した書類を裁判所に提出します。訴状は法律上、記載すべき必要な事項が決められています。訴状は、裁判所を通して相手方にも送られます。


これに対し、相手方は訴状に対して答弁書という書類に反論を書いてきます。そして、裁判の期日を通してそれぞれ主張をし、証拠を提出し、これに基づいて裁判所が判決を出します。


もっとも、裁判所では、当事者の主張や証拠から得た心証から、和解を勧めることもあり、必ず判決が出るまで裁判が続くということはありません。ですが、裁判は約1か月に1度のペースで進められていくので時間はどうしてもかかってしまいます。

 

(3)基本的な慰謝料請求までの流れ

ア 不倫相手に関する情報収集

慰謝料請求の方法を挙げましたが、どの方法も請求する相手がどこの誰であるかを知る必要があります。
具体的には、相手の住所と名前が必ず必要になります。その他にも、電話番号や勤務先が分かっていると交渉もスムーズに進みます。


また、不貞行為の証拠を集める必要があります。交渉がスムーズにいかないような相手の場合、証拠を見せることで支払いを認める場合もありますし、裁判所に訴えることになれば裁判所に証拠を提出する必要があるからです。

イ 弁護士への依頼

夫婦の一方の不倫に気づいてどの段階で弁護士に依頼するのかは、もちろん、自由です。
しかし、こういったことはどうしても感情的になりやすいのが一般的です。弁護士に相談する前に不倫相手に自分で連絡することもできますが、それで感情的になって話がこじれてしまった場合、その後に弁護士が介入してもなかなか交渉がスムーズにいかない場合もあります。


早い段階で弁護士に相談し、今後について相談することをお勧めします。

ウ 方針の決定

請求する相手に何を求めるかを決めていきます。


慰謝料の金額以外にも、配偶者に今後一切接触をしないこと(その中には会うだけではなく、メールや電話等も含みます。)、他言しないこと等を相手に求めることもできます。そのため、相手の勤務先が配偶者と同じなのか等相手との関係次第では要求する内容が変わってきますので、相手がどんな人なのかを調査することがここでも必要になってきます。

エ 交渉

相手方に慰謝料等を請求する通知をし、これに対して相手方の反論を踏まえながら慰謝料の支払い等依頼者の希望に沿うように交渉していきます。


通知する文書の内容としては、

1 相手方と依頼者の配偶者が不貞行為をしていたこと

2 これによって依頼者が精神的損害を被ったこと

3 その分の慰謝料の支払いを求めること

4 慰謝料の支払いをしない場合、裁判所への訴訟提起を検討すること等を記載する場合が多いです。
もちろん、文面は依頼者にもご覧いただき、修正を加えていきます。

オ 交渉が成立した場合

(ア) 示談書の作成

交渉で決めた慰謝料の金額、支払い時期、振込口座、その他配偶者と今後接触しないこと等を示談書として文書にまとめます。この文書は依頼者と相手方が1通ずつ持ち、いつでもその文書の内容を確認できるようにしておきます。


ここで、示談書に記載する振込口座は弁護士事務所の預かり口座になりますので、依頼者の情報を相手に知られることはありません。

 

(イ) 慰謝料支払いの確認

示談書に記載した慰謝料をその支払日にきちんと支払いがなされていることを確認したら、弁護士の業務は終了となります。


慰謝料以外の条件については、これに違反していることが明らかになった場合、依頼者の希望次第では別途慰謝料を請求することができますが、その場合は別の事件として扱うことになりますのでご注意ください。

カ 交渉が不成立の場合

慰謝料の金額やそもそも不貞行為の有無等で交渉が決裂することもあります。この場合、依頼者のご希望にもよりますが、基本的には通知書にも記載した通り、裁判所への訴訟を提起することになります。

 

3.慰謝料を請求する場合の注意点

(1)証拠の収集

慰謝料を請求する場合、まずは、どんな不貞行為があったのか、その相手が誰なのかをきちんと考える必要があります。


また、証拠をきちんと保存することが必要です。不貞行為をされた人は、感情的になりやすいのは仕方がありませんが、勢いに任せて証拠を捨ててしまうと訴訟になった場合に、裁判所が判断することが難しくなってきます。こんな証拠なんて持っていたくないと思う方も多いかと思いますが、弁護士に証拠を預けるまでは保存をしてください。


弁護士が要求する証拠は、事情を知らない裁判官を説得させる証拠になりますので、お持ちいただいた証拠だけでは足りないと感じた場合は他にどんな証拠が考えられるか弁護士がアドバイスもしていきます。

(2)不貞行為があった時期

離婚する前に夫婦の一方が不貞行為をしたら必ず慰謝料を請求することができると考えている人は多いと思います。


しかし、不貞行為に対する慰謝料は、配偶者としての権利を害されたことを根拠に請求することができるので、もう離婚の話し合いをしていた等、夫婦関係がうまくいっていない場合は、慰謝料を支払ってもらえない場合があります。


もっとも、夫婦関係がうまくいっていないと一言でいっても、その判断は非常に難しく、裁判でもよく争われる部分です。まずは、弁護士に相談してみることをお勧めします。

 

4.慰謝料を請求された場合

(1)相手方からの請求

不貞をしてしまった場合、不貞相手の配偶者に何かアクションを起こすことは通常ありません。むしろ、不貞相手の配偶者から、面談や慰謝料の支払いを急に請求されるのが通常です。


相手方は感情的になっている場合が通常です。相手方は全部事情を知っているわけではないので、実際にあった不貞行為と認識している事情が食い違っていることもあります。お一人で抱え込むよりも弁護士に早い段階で相談し、事態を悪化させないことはお勧めします。

(2)方針の決定

相手方の請求に対してどのように対応するべきかを考えていきます。相手の要求があまりにも高額な場合や職場へ不貞行為を申告する等厳しすぎる条件を提示された場合にはその条件をのむことはできません。


もっとも、実際に不貞行為をしてしまった場合は慰謝料の支払いを全くしないということは難しいので、現時点でいくらなら支払いができるのかを決める必要があります。それに合わせて他の要求されている条件面についてもどうしていくべきか決めていきます。


また、相手方の主張している不貞行為と実際の事情で異なる点は早前に弁護士にお伝えください。そうすれば、金額面を減額することも可能な場合もあるかもしれませんし、今後訴訟を提起された場合に備えることもできます。

(3)交渉

相手方に対してこちらの意向を回答し、交渉を重ねていきます。交渉は全て弁護士が行いますので、相手方と直接接することはありません。


なかなか難しい交渉が多いと思いますが、弁護士がなるべく依頼者の希望に沿うよう努力していきます。

(4)交渉が成立した場合

交渉でまとまった内容を示談書に記載していきます。後々紛争を蒸し返すことがないよう示談書の条項や文面は弁護士が手を加えていきます。


示談書には、慰謝料の支払いやその他の条件が記載されています。この示談書に違反した場合、別途損害賠償を請求されることもありますので、無理な条件の場合は必ず弁護士に申し出てください。そして、示談書が成立した場合、速やかに慰謝料の支払いをし、その他の条件を守るようにしてください。
慰謝料の支払いがなされた段階で、弁護士の業務は終了となります。

(5)交渉が不成立だった場合

こちらから積極的に行動を起こす必要はありません。まれにその後相手方が訴訟を起こさずに終わることもあります。


もっとも、訴訟を提起される場合も多くあります。相手方が作成した訴状を受け取ってから約1か月後には第1回期日が入りますので、早めに弁護士に訴訟についても依頼をするかを検討してください。そして、まずは、訴状に対して簡単な反論を答弁書という書面に記載して裁判所に提出します。その後、詳細な反論と主張、その証拠を裁判所に準備書面という書面を使って提出していきます。期日までは時間がないこともあります。訴訟を一人で行うのは物理的にも精神的にも難しいと思いますのでお早めに弁護士に相談することをお勧めします。


また、弁護士は職務上真実と反することを主張することはできません。そのため、不貞行為があった場合に、そもそも不貞行為はなく慰謝料を支払わないという主張はできません。慰謝料の支払い額を減額できるように主張をしたり、原告が提出した証拠等を過度の原告に有利に解釈されないように反論をしていくことが主な対応になってきます。

 

5.慰謝料の問題を弁護士に依頼するメリット

(1)精神的な負担

弁護士が交渉から訴訟まですべて行いますので、訴訟で尋問を行う場合を除き、相手方と顔を合わせるといった接触をする必要がなくなります。また、弁護士は守秘義務がありますのでお聞きした情報を他人に漏らすことはしません。一人で問題を抱え込むよりも相談することで精神的な負担が少なくなると思います。


また、窓口は全て弁護士になりますので、依頼がなされた後は、相手方からの連絡も裁判所からの通知もすべて弁護士の事務所に届くことになります。そのため、家族に事情を話したくない場合でもそれに配慮しながら事件を処理することもできます。

(2)不当な請求がなくなる

慰謝料を請求する方は感情的になっている場合が多く、高額な金銭や困難な条件を突き付けてくる場合もあります。しかし、弁護士に依頼すれば、不当な要求を拒むことができます。

(3)交渉から訴訟への移行

弁護士は行政書士や司法書士とことなり、交渉や訴訟を行っていくうえで制限がありません。慰謝料の金額(簡裁代理兼を持つ司法書士の場合140万円までしか訴訟ができません。)にかかわらず、ご依頼いただいた段階から訴訟になってしまった場合に備えて活動することができます。


また、交渉がスムーズにいかない事件であっても、訴訟へ切り替えるべきタイミングを弁護士が判断し、依頼者にご説明することができます。依頼者が訴訟を希望されるのであれば、弁護士が訴訟提起の準備をしますので、依頼者の物理的な負担も小さくなります。

 

6.交渉を行うことのメリット

交渉では、配偶者と今後接触しない等の慰謝料以外の条件を付けることができる点で柔軟な解決が望めます。
訴訟になってしまうと判決が出るまでに何か月もかかってしまいますので、交渉の方が早期に終了させることができる点もメリットの1つです。


相手方の経済状況によっては支払いが期待できない場合もあるので一概に交渉だけで良いということはありません。強制執行するために裁判所で判決を出してもらうことが必要になる場合もあります。しかし、交渉を行う際に相手の意向も分かる場合がありますので、訴訟でどんな主張をするのか、どんな問題点があるのかが予想しやすくなります。ケースにもよりますが、いきなり訴訟を提起するよりも交渉の機会を設けるメリットもありますので、この点も含めて弁護士と相談するのがお勧めです。

 

7.裁判を行うことのメリット

交渉がスムーズに進まない場合、裁判を行う必要が出てきます。裁判を行い、判決を得た場合、相手方がその判決に反して支払わなければ強制執行手続をすることができる点でメリットがあります。


また、裁判の手続の途中で和解をすることもできます。この場合、必ずしも希望に適ったものであるとはいえないことが多いと思います。和解を拒否して判決を望むことも可能ではあります。しかし、裁判所は当事者双方の主張や証拠を見たうえで和解の条件を決めていますので、判決も和解案と同じような金額を提示されることが多くなります。和解の場合は、交渉の段階と同様に配偶者との接触をしないことや他言しないこと等の条件を盛り込むよう裁判所に申し入れることもできるので、判決よりは柔軟です。加えて、判決と同様に相手方が和解をしたのに支払いをしないような場合、強制執行の手続をすることもできるので、裁判の途中で和解ができる可能性があることもメリットの1つです。

 

8.裁判の流れ

(1)訴状の作成

まず、裁判を起こす人のことを原告といいますが、原告が訴状という裁判を起こすための書面を作成します。ここには、裁判を起こされた被告がどんな不貞行為をしたか、それにより原告がどんな精神的損害を被ったのか、これによりいくら支払いを求めるのか等が記載されています。また、その主張の証拠を付けて裁判所に提出することになります。

(2)訴訟の提起

作成した訴状とその証拠を裁判所に提出することになります。
裁判所は各都道府県にありますが、原告が決めることができます。原告の住所に近い裁判所にするのが一般的です。


裁判所に訴状と証拠を提出すると、裁判所が1回目の期日の日程を決め、相手方に訴状と証拠を送付します。1回目の期日は、1か月から2か月以内に設定することが多くなります。

(3)期日

第1回期日までに被告は答弁書という反論と自分の主張を書いた書面と証拠を提出することになります。しかし、被告には準備する時間が少ないため、答弁書には具体的な主張が書かれていない場合が多くあります。この場合、第2回期日までに準備書面という書類に訴状に対する反論や主張を記載し、証拠を提出します。
これに対し、さらに原告も反論や主張を追加し、その証拠を提出していきます。こうやって期日ごとに当事者の主張と反論を繰り返していきます。


当事者は主張や反論をするために準備をする必要があるので、期日は約1か月後に設定されるのが通常です。そのため、1度の期日では裁判所が判断することは難しいため、どうしても時間がかかってしまいます。

(4)尋問

これまでの主張や証拠だけでなく、当事者本人の話を聞きたいと裁判所が判断した場合、当事者を裁判所に呼び、話を聞く場合もあります。


この場合、代理人弁護士、相手方弁護士、裁判官からそれぞれ質問を受け、それに答えていくことになります。裁判官の前で話すのは誰でも緊張するものですので、事前にどんな話をすることになるのか弁護士が説明します。


尋問は、双方の当事者の話を聞くのが通常ですので、この日は相手方と顔を合わせることになると思います。ですが、その他の期日には弁護士のみが出廷します。期日後には期日ではどんな話がなされたのか等をご報告します。

(5)判決

今までの当事者の主張、提出した証拠や尋問等を踏まえて裁判官が判決を出します。これに対し不服がある場合は、控訴をして裁判を続けることになります。


もっとも、判決書を受け取ってから2週間の間に控訴をしなければなりません。2週間といっても控訴の準備をする時間が必要なので、判決書を受け取ったらなるべく早く今後どうするのか弁護士と相談させていただきます。

 

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