親権

 

親権

 

1.親権とは何か、どういった権利の内容に分かれるのか

(1)親権とは
親権とは、子どもが成人になるまで監護・養育し、子どもの財産を管理する父母の権利・義務のことをいいます。夫婦が結婚している期間は、2人が親権者となり、共同で親権を行使するのが原則です(818条3項本文)。


もし、離婚する場合は、夫婦のどちらか一方が親権者になるよう決めます(819条1項2項)。

 

 

(2)親権の内容

① 子どもに対する監護教育の権利義務(監護権 820条)

子どもの身体上の監督保護と精神的発達を図る権利と義務です。


具体的には、子どもがどこに住むかを定める居所指定権(821条)、子どもを躾のために叱る懲戒権(822条)、子どもが職業に就くことを認める職業許可権(823条)などがあります。また、結婚のように法的な身分が変わる場合に親の同意を要求していることもあります(737条1項)。

② 子どもの財産上の管理処分の権利義務(824条)

子どもの財産を管理・維持したり、法律行為を行う必要があるときに子どもを代理したり同意する権利と義務のことです。


子どもであっても、お年玉やお祝い金等財産を貰うことはあります。しかし、子どもに管理をさせると後先を考えずに好きなものに使ってしまうおそれがあります。そのため、財産が減らないように管理・維持したり、預金をしたり、不動産の場合は財産の価値を上げることも親権の内容として認められます。これらの行為を親権者が行う場合は子どもを代理することになります(824条本文)。これに対して、子どもが取引をする場合、親権者はそれを認める場合は同意することが必要になります(5条1項)。

 

2.離婚をする際、親権者はどのように定めることになるのか

(1) 協議離婚による場合
夫婦で話し合ってどちらが親権者となるべきかを決めます(819条1項)。


なお、離婚届には夫婦どちらが親権者になるのかを記載する欄があるので、離婚届を提出する際に空欄のままでは市役所も離婚届を受理しません。そのため、離婚することまではお互いに意見は一致しているが、親権についてどちらも意見を譲らないため、協議離婚が成立せず調停離婚をせざるを得ない夫婦も多くいます。

 

 

(2)調停による場合

① 親権を求める理由の聴取(家手169条2項)

まず、親権者になりたい理由を聞かれます。親権者には、子どもに対する権利ばかりではなく義務も伴います。しかし、相手方への見栄や単に相手方の監護に対する漠然とした不安感から自己の親権を主張する夫婦もいます。そこで、本当に子どものためにどちらが親権者になるのがふさわしいかを判断するためにまず夫婦の話を聴いていきます。

② 子どもの意思確認(169条2項)

幼児のように意思を表せないような場合は行いませんが、10歳前後の子どもであればある程度自分の気持ちを話せるので、離婚後に夫婦のどちらと生活していきたいと考えているのか確認します(家手258条1項・65条)。これは、主に家庭裁判所調査官によって調査されます。

 

(3)審判による場合
親権者を指定する調停が不成立の場合、審判移行といって改めて審判の申立てをしなくても自動的に審判手続に移り、裁判官所が判断することになります。


裁判官は、これまでに夫婦双方が提出した書類や、家庭裁判所調査官がか行った調査結果等の資料に基づいて判断していくことになります。調停を行わなかった場合、①親権を求める理由の聴取や②子どもの意見確認を行います(家手169条2項)。ここでは、子どもの意思を尊重するため、15歳以上の子どもについては意見確認を行うことが義務になります。

 

(4)訴訟による場合
夫婦で話し合っても決まらず、調停も不成立に終わり、審判でも確定しない場合、改めて訴訟を申立てて親権者を夫婦のどちらにするのか裁判所に判決という形で決めてもらうことになります。
この場合、当事者の主張や証拠を裁判所が考慮します。その過程で、尋問を行うこともあります。

 

3.親権者について争いとなった場合、どのような基準で親権者を決めるか

子どもにとって最善の利益は何か(子どもの利益と福祉)という観点から判断されていきます。具体的には、次の1~4を考慮しています。

 

1 現在までの子どもの養育状況
今まで主に子どもの面倒を見ていたのは夫婦のどちらか。そして、そのように決まった理由。

 

2 今後の養育方針
今後どこで、どのように養育していくのか、親族の支援を受けることができるのか。

 

3 一方の当事者が親権者となるのが適当な理由
子どもに対する愛情があるか、今までの養育が適切なものであったか、それを今後も続けていくことができるか。住居や経済的な面で子どもとの生活に支障は出ないか。

 

4 他方の当事者が親権者となるのが不適当な理由
今まで監護養育に関わっていたか、関わっていたとしても不適切であったか。今後も養育することができない事情があるか。

 

このように、親権者の指定は、あくまで子どもの利益を考えて判断するため、離婚原因はあまり考慮されていません。とはいえ、子どもの養育に悪い影響を与えるような事柄は④に含まれて考慮されることになります。

 

4.監護権とは何か、監護権のみを分離させる場合とはどのような場合か

(1)監護権とは
監護権とは、親権のうちの子どもの身体上の監督保護する権利のことをいいます。

 

(2)監護権の分離
離婚する際は、夫婦のいずれが親権者になるのか決めますが(819条1項・2項)、監護権者を親権者と異なるよう協議することができます(766条1項)。


また、裁判所が判断する場合も、親権者と監護権者を分ける場合があります。
例えば、子の養育について母親に任せた方が良い場合であっても、その母親に浪費癖があるケースが考えられます。この場合、子どもの財産を母親が使ってしまうおそれがあるので、監護権者を母親にし、子どもの財産管理を父親に任せるために親権者については父親にすることもあります。

 

5.家庭裁判所調査官とはどういう人で、どういった役割を果たすのか

家庭裁判所調査官は、主に家事事件や少年事件に関わることが多くあります。ここでは、離婚事件に限定して説明します。


離婚事件で親権者が問題となる場合、子どもの意思も尊重されますが、子どもは大人程上手く自分の考えを話すことはできません。そこで、家庭裁判所調査官が子どもと面接し、事件の問題点やその背景を調査し、ときには社会福祉士や医療関係機関と連携をとって夫婦や子どもにとって最適な解決方法を検討し、裁判官に報告します。この家庭裁判所調査官の報告に基づいて裁判官は、調停や審判を進めていくことが多くあります。


また、子どもだけでなく、大人に対しても、冷静に話し合いができるようにカウンセリングを通じて手助けをすることもあります。

 

6.親権を決める際の注意点

(1)子どもの連れ去り
調停や審判の途中に当事者の一方が子どもを連れ去ってしまうことがあります。この行為は、裁判所の手続を無視する行為であり、ルールを守ることができず実力行使を行うことは子どもへの養育という点でも良いことではありません。そのため、裁判所は親権者を判断するにあたってマイナスの事情として考慮しますので、注意が必要です。

 

(2)親権者の変更
親権者を一度決めた場合でも、これを調停や審判で変更することができます。
しかし、親権者を変更するためには、「子の利益のため必要があるとき」という条件を満たす必要があります。このような条件が要求されるのは、親権者が何度も変更されると子どもがその状況に適応することが難しく、子の養育上良くないと考えられているからです。


そのため、親権者が病気になるなど親権者としての権利と義務を果たすことができない場合や親権者が監護権を放棄し、子どもの福祉が害されるような場合に親権者の変更が認められます。このような子どもに対する配慮から、夫婦間で同意があった場合でも審判や調停を行わなければ親権者を変更することができなくなっています。

 

7.親権が問題となる場合に弁護士に頼むメリット

親権については、特に当事者が感情的になりやすい問題ですし、子どもとの思い出は数多くあるため、当事者だけではどんなことを話せば効果的かを考えるのは難しいと思います。ですが、弁護士は冷静に判断することができます。

 

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